高麗島伝説 of 久賀島 - Hisakajima


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昔、蕨の港から北へ行くこと60キロの所に高麗島という小さな島があった。
その島の住人に一人の信仰の厚い男がいて、一体の地蔵に朝晩お参りを欠かしたことがなかった。
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ある夜、この地蔵が男の夢枕に立って「自分の顔色が変わった時は、この島に一大事変が起こる故、よく気をつけていて、すぐにこの島を逃れいでよ」とのお告げがあった。
人の良いその男は、この夢のお告げにすっかり驚き、一刻も早く皆に知らせねばと、とるものもとりあえず皆にふれまわったが、島民の中にはこの話を馬鹿にして相手にせぬ者もおった。
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ある時、島の心善からぬ者がひそかに、その地蔵の顔を赤く塗りつぶしてしまった。
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正直者の男はこれを見て大いに恐れおののき、用意の舟をくりだし、気心知れた仲間の者と共に、 島の人達の嘲笑の声をあとに島を逃れでたが、しばらくして島を振り返ると島の姿は無く、すでに海中に没して再び島を見ることはできなかった。
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島を逃れた一行は、波のまにまに漂いながら、今の大野浜にたどり着いて、携えてきた地蔵を今の宮田という所に祀り、皆はその近くに住みついた。その当時飲用した水は「コーライ水」といわれている。
地蔵を祀った宮田には、以前は婦人が入ることをかたく禁じていた。その後、住民たちはその土地に不便を感じて、蕨方面に移り住むことになったという。
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地蔵は、その後宮田から今の蕨の大師堂のそばに移され、今も蕨の人達に大切に祀られている。
高さ三尺ばかりの石仏で、首が長い地蔵である。

高麗島のあった所は「コーライ曽根」といわれ、格好の漁礁であり、今もなお陶器類を釣り上げることがあるという。